相続 よくある質問

目次

 


Q_30夫が受取人になっている生命保険金は相続財産か

 

夫が受取人となっている生命保険金は、妻死亡時の相続の対象になるのでしょうか。また受け取った生命保険金額は、本来の相続分から差し引かれるのでしょうか?

A_30生命保険金は相続財産ではなく、相続対象にはなりません。但し、相続人が取得した生命保険金につき、被相続人が支払った保険料合計、または被相続人死亡時に解約した解約返戻金額が、遺贈による特別受益として持戻しの対象となる事が有ります。

「生命保険金と相続について」

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相続は、被相続人の財産を承継するものです。また生命保険金は、人が死亡した事により支払われるという点で相続とよく似ていますし、加えて被相続者が保険料を支払っていたがゆえに死亡時に保険金が支払われるという点でも、相続との間に関わりを持っています。
しかしながら相続人が法律によって定められている相続とは違って、生命保険金の受取人は、保険契約にて個別に定められています。 そこで、生命保険金は、相続財産に含めるべきか、すなわち相続対象になるものとして、相続人間での遺産分割の協議を行えるのかが問題となります。

「生命保険契約の各種形態における相続財産性」

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生命保険契約には色々な形態がありますので、各々について死亡時受取る生命保険金が相続財産であるかどうかを考えてみます。

(ア)生命保険契約にて、被相続人を被保険者としており、相続人中の特定の者を生命保険金の受取人として指名している場合
この場合、受取人として指名された者は、第3者のために行う契約である生命保険契約に基づき、固有の権利として生命保険金を取得します。 即ち生命保険金は保険契約という契約の効果により取得するものであり、相続によって取得するものではありません。

(イ)被相続人が、生命保険の受取人をたんに「相続人」と指定していた場合
この場合における受取人指定は、保険金請求権が発生した当時(被相続者死亡時)の相続人となるべき個人を特に受取人として指定したものと考えられており、即ち(ア)と同様に、生命保険金は相続により取得した財産ではない事になります。

(ウ)保険金受取人の指定がない場合
この場合の保険金受取人は、保険契約の約款により決まります。(ア)、(イ)と同様に、受取人が固有権利として保険金を請求する事ができて、相続財産とならないケースとしては、保険約款にて、被保険者の相続人を保険金受取人としているケース、また被保険者の配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹をこの順位に従って保険金受取人にしているケース等が考えられます。 これに対して、保険約款にて保険金受取人は民法の規定を適用するとされている場合には、保険金請求権は相続財産であるという考え方と、保険金請求権は受取人の固有財産であって相続財産ではないという二通りの考え方があります。

(エ)被相続人が自己を受取人として指定していた場合
この場合、指定された保険金受取人はいない事になりますので、(ウ)と同様に考える事ができます。

(オ)被相続人が指定していた保険金受取人が被相続人より先に死亡したのにも関わらず、被相続人が受取人の再指定をせずに死亡してしまった場合
この場合の受取人は、商法の規定に従い、被相続人が指定していた受取人の相続人が保険金の受取人となります。 この相続人は、受取人が死亡した時の相続順位に従って決められます。この場合においては、上述の(ア)、(イ)と同様、受取人の相続者は、固有の権利として、生命保険金を取得する事になり、相続財産とはなりません。

「保険金受取人の特別受益について」

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生命保険金が相続財産ではなく、保険金受取人が固有の権利として取得するものであるとしても、受取人が相続人でもある場合、他の相続人と比較して、特別の利益を受け取るという観点も考えられ、この特別の利益が、遺産分割を行う場合に、特別受益として持戻し対象となるかどうかが問題となります。
これに対して、最高裁としては、死亡保険金の請求権を得る為の費用である支払ってきた保険料は、被相続人が生前に保険者に支払ったものであり、保険契約者である被相続者の死亡によって、保険受取人である相続人に、死亡保険金の請求権が発生するという観点も考慮すれば、保険金受取人である相続人と他の共同相続人との間に発生する不公平が、民法903条の趣旨に照らしてみた時、到底是認できない程に著しいと評価できる特段の事情がある場合には、同法の類推適用によって、死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となるが、しかしながら、原則としては特別受益として扱わなくても良い、と判断をしました。 この点に関しては、別途掲載する「生命保険金は特別受益に当たるか」を参照して下さい。

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Q_30義父名義の土地に妻が建てた自宅に、妻が死亡した後も夫が住み続ける事ができるか

 

私たち夫婦は、新居を建てるに際して、妻の父の了解を頂いた上で、義父名義の土地に妻名義で家を新築しました。私たち夫婦と義父の関係は良く、新築するに際しても、特に契約書等は作っていませんでした。義父の意向もあり同居こそしていませんが、子供たち含め、家族ぐるみで義父の家と行き来をしてきました。 ところが、妻が他界して四十九日の法要も済ませた最近になって、義父や妻の兄弟から、私が義父名義の土地を使う権利はないのだから、建っている建物を撤去し土地を明け渡す様に請求されました。私はこの請求に従わなければならないのでしょうか。

A_30妻が、あなたを始めとした家族と住むために、その父名義の土地の上に自宅を新築し、その際妻の父(義父)がこの新築を了解していたならば、その後に妻やあなたと義父との間で争いが絶えず、往来も全くなかった等の特段の事情がない限り、あなたは義父名義の土地を建物敷地として利用を続ける事ができます。

「土地の利用関係を法律的にみた場合」

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家族の一人が他の家族名義の土地の上に建物を新築する場合には格別の契約書等を作成したり、借地の地代の支払いを約束したりしない方が、むしろ一般的です。建物はその敷地なしには存在する事はできませんから、土地利用に関する関係性を法律的に見た場合には、その土地についての使用貸借契約が存在すると考えられています。
親子等の家族間には、愛情や行為に裏付けられた特別の関係があるわけなので、この関係に基づいて無償で建物用敷地として土地を利用する事の出来る契約が存在すると考えるわけです。従って、生前のあなたの妻と義父の間には、ご質問の土地に関しての使用貸借契約が成立していた事になります。

「借主の死亡と使用貸借契約」

ところで、使用貸借契約では借主による賃貸支払いという対価を伴わないので、貸主と借主間の特別な人間関係を基礎として成り立っていると言える事になり、民法では借主の死亡によって使用貸借契約は終了すると定めています。 あなたの義父や義兄弟は、この法律を形式的に主張しているのかもしれません。
しかし、使用貸借契約は前述の通り、特別な人間関係を基礎として成り立っているので、借主の死亡によって使用貸借契約が終了するかどうかは、この人間関係や意思、及び契約内容等を総合的に考慮、判断する必要があります。

「妻の死亡と土地利用権」

黄赤橙3冊+鉛筆_111x100 翻って考えてみると、あなたの妻は、あなたを始めとした家族と居住、生活する為に自分名義で自宅を新築した訳で、義父もこの妻(娘)の意向を認めて自分名義の土地の上に自宅の新築を了解し、その後もあなたの妻の死亡するまでは何らの異議を言う事もなく、土地の利用を認めてきました。
あなたの妻と義父間の土地についての使用貸借契約は、この土地の上に建物を所有し、この建物で生活をする事を目的としていた訳なので、妻があなたより先に死亡したという、いわば偶然の出来事によってあなたが土地を利用できなくなる事は極めて不合理です。

従って、妻死亡により建物を相続したあなたが、生前のあなたの妻と義父間に成立していた土地使用貸借契約も相続したのか、妻死亡によってあなたと義父間に新たな土地使用貸借契約が成立したのか、あるいは妻の生前に義父との間で成立していた土地使用貸借契約は実はあなたとの間でも成立していたのか等々、細かい事情によって種々の法律的構成が可能ですが、あなたの妻が義父に無断で義父名義の土地に自宅を新築したとか、新築後に義父と極めて不仲になり、使用貸借契約の基礎となっている愛情や好意が喪失したと判断せざるを得ない等の特段の事情が存在しない限り、あなたが妻名義の家に居住し続ける限り、その敷地である義父名義の土地を利用し続ける事は可能です。

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Q_30生命保険金は特別受益にあたるか

 

私は妻の後夫になりますが、このたび妻が亡くなりました。妻は私を受取人として1,000万円の生命保険に入っていたので、私はその保険金を受け取りました。私ども夫婦に子供はなく、妻と先夫との間には子が1人あります。この子が、遺産分割は生命保険の分も入れて考えるべきだと言ってきています。どうしたらよいでしょうか。

A_30生命保険による死亡保険金は相続財産ではなく、遺産分割の対象にはなりません。しかしながら、保険の金額や保険の種類、内容によっては、特別受益として遺産分割の際に持戻しを考慮すべき場合があります。

「生命保険と相続」

赤橙青3冊_91x100 相続人が受取人となって受領した保険金は、被相続人と保険会社との保険契約にもとづき、相続とは無関係に取得したものなので、受取人の固有財産であって、遺産分割の対象となる遺産ではないというのが一般的な考え方です。従って、遺産分割は生命保険の分も入れて考えるべきだという意味が、受け取られた生命保険金を遺産分割の対象にするべきだということであれば、その必要はないという事になります。
この点に関しては、設問「夫が受取人の生命保険金は相続財産か」を参照してください。

「保険金受取人の特別受益」

青黄他5冊横_90x100 しかし、生命保険金が受取人の固有財産であって遺産分割の対象となる遺産ではないという事と、生命保険金を受取人の特別受益とみなして持戻しの対象にすべきかという事とは、別の問題です。
特別受益というのは、相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、また生前に贈与をうけた者がいる場合、これらを特別受益として相続分の前渡しをうけたものとして取り扱う事をいいます。特別受益をうけた者がうけた利益を遺産に戻して相続分を計算する事を、特別受益の持戻しといいます。
生命保険金は、相続人が生前に保険料を支払った事に基礎を有し、また保険契約者である被相続人が受取人を指定する事により受取人が保険金を取得する事ができるというしくみになっています。
この点を実質的に考えれば、被相続人から保険金受取人に対して贈与あるいは遺贈があったとみる事もできます。生命保険金は、遺産分割の際に特別受益として持戻しの対象となるという考え方の由縁です。

最高裁は、死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は、被相続人が生前保険者に支払ったものであり、保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生する事などにかんがみると、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認する事ができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当であるとするが、原則としては特別受益として扱わなくてよいと判断しました。そして、前記特段の事情の有無については、保険金の額や、この額の遺産の総額に対する比率の他に、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人および他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきであるとしました。特段の事情の判断にあたっては、保険金の額及びこの額が遺産全体の額に対して占める比率が重要な事情として考慮されるといわれています。

「持戻免除の意思表示」

青緑ピンク横3冊_123x100 生命保険金について特別受益にあたる場合には、持戻免除の意思表示がなされているとみるかという事が問題になります。
持戻免除の意思表示というのは、被相続人が贈与や遺贈をする際、持戻しをしなくてよいという意思を明らかにする事です。多くの場合で明示的になされる事はなく、黙示的になされたかどうかが問題となります。配偶者に対し、生活保障の目的で保険金を取得させる場合は、持戻免除が黙示的になされていると考える事が十分可能と思われます。今回の質問でも、子のない後夫が受取人として指定されており、また保険金額も1,000万円ですから、特別受益にあたらない、もしあたるとしても持戻免除の意思表示がなされていると考え、遺産分割に際し考慮しない事も考えられると思います。
なお、生命保険金を特別受益とする場合、その持戻しの金額は、払い込んだ保険料の金額、払い込んだ保険料に応じた保険金額、解約した場合の解約返戻金という3つの考え方があり、裁判例も様々です。

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Q_30養子は実親を相続できるか

 

私は養子にいった者ですが、このたび実母が亡くなりました。私は実母の遺産を相続する事ができるのでしょうか。普通養子と特別養子とでは違うのでしょうか。

A_30普通養子の場合、養子は養子縁組後も、実母の遺産を相続する事ができます。特別養子の場合は、養子は実母の遺産を相続する事はできません。

「養子縁組の効果(普通養子の場合)」

赤青緑小3冊横_79x100 現行民法では、養子について普通養子と特別養子の2種類を認めています。いずれにおいても養子は養子縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得し、また養親及びその親族との間において血族間におけるものと同一の親族関係を生じます。つまり、養子と養親および養子と養親の父母や子といった親族との関係は、実親子関係におけるそれと全く同じものとなるという事です。従って、相続の面でも養子は養親の嫡出子として養親の相続人になります。養親に実子がある場合には、養子はその実子と同一の相続分により養親の相続人となります。

他方で養子は、普通養子の場合には養子縁組によっても実親および実方の親族との関係には全く影響が及びません。つまり養子にいっても、養子は実親と実の親子関係にあり、実親の親族との間も従来通りの親族関係が続くという事です。従って養子は、実親が死亡したり、実親の関係の親族が死亡した時には、従来通りの関係により相続人となります。ご質問の場合も、普通養子の場合は、あなたは実母の相続人になります。実母に他の実子や養子がいれば、それらの子と均等の相続分により相続します。その結果、養子は実親の関係でも、養親の関係でも相続人となり、いわゆる二重の相続権をもつ事になります。この事は逆に、養子が死亡した場合には、養親と実親が頭割りにより均等に相続権をもつ事を意味します。

「特別養子の場合」

ピンク2冊_179x100 以上とは異なり、特別養子の場合は、特別養子縁組が成立する事により、養子と実親、実方の親族との関係は原則として終了してしまいます。
特別養子縁組は、昭和63年1月1日より認められる事になったもので、いわゆる藁の上から養子を認め、養子と実親との関係を断つ事により、養子と養親との関係を実親子関係にできるかぎり近づけようとしたものです。
特別養子は家庭裁判所の審判により成立します。特別養子になると、実親および実親の親族との関係は、近親者どうしでは婚姻できないという関係以外の面では消滅してしまいます。従って、特別養子の場合、養子が実親や実方の親族の相続人となる事はできません。ご質問の例で、養子にいったというのが特別養子であれば、あなたは実母の相続人となる事はできません。

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Q_30相続人の一人が行方不明のときは

 

母が亡くなり姉と私と妹が相続人になりましたが、妹は数年前から行方不明になっています。どのようにして遺産分割の手続きを進めたらいいでしょうか。

A_30妹が行方不明になってから、普通の場合には7年が、危機に遭って行方不明になった場合には1年がそれぞれ経過している場合においては、失踪宣告を得て妹は死亡したものとみなす事ができます。そうでない場合は、妹の為に家庭裁判所で不在者財産管理人の選任をしてもらって、この管理人と遺産分割協議を進める事になります。

「不在者財産管理人の選任」

5冊建て積み_95x100 ある人が亡くなり、相続人となる者が数人いる場合には、相続人全員が参加して遺産分割手続きを行う事になります。相続人の1人が行方不明であるからといって、その者を除外して遺産分割をする事はできません。
そこで、相続人の中に従来の住所や実際に住居としていた所を去って行方が知れない者(この者を不在者といいます。)がいる場合、他の相続人はこの不在者の利害関係人として、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申立てをする事ができます。裁判所に選任された不在者財産管理人は、不在者に代わって不在者の財産を管理を行いますので、他の相続人はこの管理人と遺産分割協議を進める事ができます。
ただし、管理人は不在者の財産を管理する事は当然にできますが、その財産を処分する事は家庭裁判所の許可を得て行う事になっています。そして遺産分割は、不在者の財産を処分する行為になりますから、管理人が遺産分割協議を成立させたり、遺産分割の調停を成立させる時、あるいは遺産分割の調停や審判を申し立てる時には、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
許可を得る遺産分割の内容としては、不在者の相続分に見合う何らかの遺産を不在者が取得する事が多いでしょう。しかし、中には不在者が生前贈与をうけている場合や、不在者の生存の可能性が低い場合には、不在者の取得分をゼロとする遺産分割が許可される事もあります。また、遺産を取得する相続人が、不在者が生存している事がわかった時に、不在者に対して債務を負担する方法による遺産分割が許可される事もあります。

「失踪宣告による場合」

ピンク2冊_179x100 不在者の行方不明が長期におよぶ場合、この不在者について失踪宣告をうけて、この者を死亡した者とみなす方法があります。
失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2つの場合があります。普通失踪は、行方不明になってから7年間生死が不明の場合、特別失踪は、戦地に臨んだ者については戦争が終わった後、沈没した船中にいた者については沈没後、その他生命の危険のある危難に遭った者についてはその危難が去った後、それぞれ1年間生死が不明な場合をいいます。家庭裁判所が失踪宣告をすると、普通失踪の場合は7年間の失踪期間の満了したときに死亡したものとみなされます。特別失踪の場合は危難が去った時に死亡したものとみなされます。
ご質問の場合にも、妹が行方不明になって7年間経過している場合、あるいは妹が危難に遭ってから1年間経過している場合には、相続人であるあなたか姉が利害関係人として家庭裁判所に失踪宣告の申立てをするといいでしょう。失踪宣告がなされると妹は死亡したものとみなされ、母の相続に関しても上記の死亡時点で死亡したものとして扱われます。したがって妹に夫も子どももいなければ、あなたと姉とで遺産分割をする事ができます。

「失踪宣告の取消し」

横本入れ_118x100 不在者について失踪宣告がなされ死亡したものとみなされた場合において、後にその者が生存している事がわかった場合には、失踪宣告は取り消されます。この場合それ以前に遺産分割が終わっていた時は、失踪宣告をうけた者の生存を知らなかった相続人は、遺産分割で取得した遺産のうち残っている財産を返せば足ります。しかし生存を知っていた相続人に対する関係では遺産分割は無効になってしまい、その相続人は取得した遺産を全部返した上で、遺産分割をやり直す必要がでてきます。

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Q_30相続人に未成年者がいる場合の遺産の分割は

 

妻がなくなり、私と未成年の子2人が相続人になりました。妻名義の土地建物や預金を私の名義に変えたいのですが、私が未成年の子2人を代理する事により、私だけで遺産分割協議をする事ができますか。

A_30あなたが親権者として未成年の子2人を代理して遺産分割協議をする事はできません。未成年の子2人のそれぞれについて家庭裁判所で特別代理人を選任してもらい、その特別代理人とあなたで遺産分割協議をして下さい。

「未成年者の行為能力」

青紫緑3冊_100x100 未成年者は単独では「法律行為」をする事はできず、「法定代理人」が未成年者に代わってこれを行うか、あるいは「法定代理人」が同意をして未成年者自身がこれを行う事になっています。この事から、未成年者には行為能力がないといいます。そして遺産分割協議を行う事も、一種の法律行為と考えられていますから、結局未成年者は自ら遺産分割協議を行う事はできず、その法定代理人が未成年者を代理して遺産分割協議を行うか、法定代理人の同意を得て未成年者自身が遺産分割協議を行う事が必要になります。
未成年者の法定代理人というのは、通常親権者をいいます。原則として親権者は父母2人でなりますが、父母の一方が死亡した時は他方の親、父母が離婚した時には指定された一方の親が単独で親権者になります。したがって、ご質問の場合のように母が亡くなった未成年者にとっては父が親権者となり、一般的には父が未成年者の為に親権を行使します。ただし、未成年者のうちで結婚したものがあり、この者が婚姻届を出して法律上も婚姻している場合には、この者は年齢的には20歳未満であったとしても成年に達したものとみなされ、自ら遺産分割協議を行う事ができます。

「利益相反行為」

縦本入れ_79x100 ところで、ご質問の例では、相続人は夫と未成年の子2人の合計3人であり、本来はこの3人で遺産分割協議を行う必要があります。しかし、夫(未成年者にとっては父)が未成年の子2人の親権者として、未成年の子を代理して遺産分割の協議を行う事は、夫(父)と未成年の子との間で利益が相反する事になります。つまり遺産分割協議は、相続人間で客観的、外形的には利害の対立が生ずるおそれがある行為といえますから、法律上は利益相反行為であると考えられるのです。
このように親権者と未成年の子との間に利益が相反する行為をする場合には、親権者は子の代理人となる事は認められず、子の為に特別代理人を選任しなければなりません。また、未成年の子相互の間で利益が相反する場合にも、親権者はそのうちの1人の子の代理をする事はできますが、他の子については代理をする事はできず、特別代理人を選任しなければなりません。
遺産分割協議は先に述べたように、相続人全員の間で、法律上は利益が相反する行為です。したがって、ご質問の場合の相続人である父と2人の未成年の子はいずれも遺産分割協議において利益が相反する事になります。この場合、父は2人の子のいずれについても親権者として子を代理する事はできず、2人の子それぞれについて家庭裁判所で特別代理人を選任してもらい、この特別代理人との間で遺産分割の協議をしなければなりません。

「特別代理人の選任」 赤見開き縦_110x100

特別代理人は、親権者の申立てにより家庭裁判所が選任する事になっています。特別代理人を選任せずに、親権者が自分と未成年者の代理人を兼ねて遺産分割協議に参加して成立した遺産分割は無効になってしまいます。

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Q_30妻の債務は相続したくないが

 

私の妻は商売に失敗し、多額の債務を残したまま亡くなりました。私と子どもは相続人としてこれらの債務を支払わなくてはなりませんか。債務を免れる方法がありますか。

A_30 相続人は、相続により債務も承継する事になりますが、相続放棄の手続きを取れば債務を免れる事が出来ます。

「被相続人の債務の相続はどうなるか」

橙分厚い1冊_125x100 被相続人が債務を負っていた場合、その債務は相続が始まると当然に分割され、相続人が相続分に応じてこれを引き継ぐ事になります。例えば妻が亡くなり、1,000万円の債務があった場合、夫がその相続分2分の1にあたる500万円の債務を引き継ぎ、子がその相続分2分の1にあたる500万円の債務を引き継ぐ事になります。この様に債務は相続人間での遺産分割をまたず、当然に承継されます。

「相続の放棄とは」

5冊横積_96x100 そこで、相続人が被相続人の債務の承継を免れる為には、相続放棄の手続きを取る必要があります。相続放棄は、相続人が家庭裁判所に相続放棄の申述をし、この申述が家庭裁判所に受理される方法によって行われます。この方法ではなく、家庭裁判所と関係なく相続放棄の書類を作ったとしても、債務を免れるという意味での相続放棄の効力は生じません。一般にいわれている相続放棄は、たんに遺産を取得しないという意味にすぎない事もあります。この場合、遺産分割協議の効力が生ずる事がある事は別としても、債務を免れるという効力は生じません。

「相続放棄の効力」
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相続放棄をすると、被相続人の債務の承継を免れると同時に、被相続人の財産も承継する事ができなくなります。つまり、相続放棄をした者は、その相続に関しては始めから相続人とならなかったとみなされます。
ですから、第1順位の相続人全員が相続放棄をすると第2順位の相続人が相続する事になります。ご質問の場合、夫と子が相続放棄をすると、被相続人の直系尊属が相続人になりますし、直系尊属が相続放棄をすると兄弟姉妹が相続人になります。それぞれの立場で被相続人の債務を引き継ぎたくなければ、相続放棄の手続をとる必要があります。相続放棄は相続人全員が一致して行う必要はなく、一人一人が行う事ができます。

「相続放棄の期間」
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相続放棄は、相続人が自己の為に相続の開始があった事を知った時から3か月以内に家庭裁判所に対する申述をしなければならない事とされています。
この“自己の為に相続の開始があった事を知った時”の意味は、一般には、相続人が被相続人の死亡のほか、自己が相続人になった事をもあわせて知った時をいいます。さらに裁判例では、相続人が債務を含めて遺産が全くないと誤信した為相続放棄の手続をとらなかった場合で、相続人の誤信がやむを得ないと認められる場合には、例外的に、被相続人の債務を含めて遺産の存在を知った時から3か月間は相続放棄を認めています。

また、相続人が、被相続人の死亡の事実及び自身が相続人である事を知ったが、被相続人において全ての財産を他の相続人に相続させる旨の公正証書遺言をしていた事から、みずからは被相続人の積極及び消極の財産をまったく承継する事がないと信じ、かつこの様に信じた事について相当な理由がある場合には、当該相続人についての相続放棄の熟慮期間は、債権者から催告をうけ、これにより債務の存在を知ってから3か月であるとされた事例があります。

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Q_30相続放棄ができるのはいつまでか

 

私の母は10年以上前に父と私を置いて家を出てしまい音信不通となっていたところ、母が死亡したとの連絡があり、遺体を引き取って葬式を済ませました。ところが母の死亡後3ヵ月以上経過した最近になって、母の債権者という人が現れ、父と私に母の借金を支払う様にいってきました。支払わなくてはいけないのでしょうか。なお、母は生活保護を受けながら、一人暮らしをしていた事が死亡後にわかかりました。また、母の借りていた借家には、家財道具らしいものは何もありませんでした。

A_30 被相続人である母と10年以上音信不通であった事や、母の生活状況からすると、あなたと父が3か月以内に相続放棄をしなかった事が相続財産が全くないと信じた為であり、かつ、そう信じた事は相当な理由がある時に該当する余地がありますから、家庭裁判所に相続放棄の申述をする事ができると思われます。

「相続放棄の熟慮期間とは」

青黄他5冊横_90x100 相続人は、被相続人に属する積極財産、消極財産(債務)を含めた一切の財産を引き継ぐという相続の効果を拒否する事ができ、これを相続放棄といいます。相続人は、相続放棄を家庭裁判所に対する申述によってしなければならず、家庭裁判所が申述を受理した時に相続放棄の効力が生じます。相続放棄をするかどうかを選択する為には、相続の対象になる積極財産と消極財産のいずれが多いかを調査する必要がある為、ある程度の調査期間が必要になります。他方、被相続人の債権者にとっては、相続人に被相続人の債務の請求が行えるかどうかがいつまでも決まらないとすれば、その立場が不安定なままで放置される事になります。そこで、民法915条は「自己の為に相続の開始があった事を知った時」から3か月以内に家庭裁判所に対する相続放棄の申述をしなければならないと規定し、3か月間の熟慮期間を定めています。

「相続放棄の熟慮期間の起算点」

縦本入れ_79x100 そこで、「自己の為に相続の開始があった事を知った時」とはいつを意味するのか、すなわち相続放棄の熟慮期間の起算点はいつかが問題になります。これについて「自己の為に相続の開始があった事を知った時」を文字どおり読みますと、相続人が被相続人の死亡とこれにより自己が法律上相続人となった事を知った時が相続放棄の熟慮期間の起算点になります。
ところが、そうすると、相続人が被相続人と生前に交流がなく、被相続人に債務がある事を全く知らなかった場合に、3か月の熟慮期間が経過するのを待って債権者が相続人に被相続人の債務の支払を請求するケースが生じ、この場合相続人はもはや相続放棄の申述をして債務を免れる事ができない事になります。
そこで、最高裁は、この様なケースを救う為に次の様な判断を示しました。すなわち、「相続放棄の熟慮期間は、原則として、相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から起算すべきものである」としながら、「相続人が右各事実を知った場合であっても、右各事実を知った時から3か月以内に相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じた為であり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態、その他の諸般の状況から見て当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待する事が著しく困難な事情があって、相続人において右の様に信ずるについて相当な理由があると認められる時には、熟慮期間は相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識しうべき時から起算すべきである。」と判断しました。この判断は、要するに、相続人が相続財産が全くないと信じただけでなく、そう信ずる事について相当な理由が必要であるとするもので、被相続人が亡くなるまでの生活の状況や相続人との交際の状態により判断されます。

ご質問の場合においても、被相続人である母と10年以上音信不通であった事の他に、生活保護をうけながら一人暮らしをしていたという母の生活状況からして相続財産、とりわけ債務の存在が全くうかがい知れない事等を考えると、相続債務の存在を始めて知った時から起算して3か月間は、相続放棄の申述ができると思われます。
また、相続人が、被相続人の死亡の事実および自身が相続人である事を知ったが、被相続人において全ての財産を他の相続人に相続させる旨の公正証書遺言をしていた事から、みずからは被相続人の積極及び消極の財産をまったく承継する事がないと信じ、かつこの様に信じた事について相当な理由がある場合には、当該相続人についての相続放棄の熟慮期間は、債権者から催告をうけ、これにより債務の存在を知ってから3か月であるとされた事例があります。

「相続財産が全くない場合に限られるか」
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熟慮期間の起算点の繰り下げが認められるのは、相続財産がまったく存在しない場合に限られるか(限定説)、被相続人に相続財産があったとしても、予期しない多額の消極財産が判明した場合にも認められるか(非限定説)という問題があります。
裁判例には、被相続人に積極財産及び消極財産(債務)がある事を認識して遺産分割協議をし、不動産の一部について相続登記を経由し、債務を弁済していた場合に、その後の提訴によって初めて多額の別の債務を知ったとしても、熟慮期間の起算点を繰り下げるべき特別の事‘情があったとはいえないとした事例があります。前述の最高裁判例も、限定説に立つものと解されています。

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Q_30素行の悪い娘に相続させないようにするには

 

私の長女は高校生の頃から非行に走り、30歳になった現在も定職につかずに家出を繰り返しており、私の店の金を持ち出したり、私や私の夫、長男に暴力をふるう事も度々ある始末です。私の財産を長女に相続させない様にする方法があるのでしょうか。

A_30 長女に相続させない様にする方法としては、長女に対し相続人廃除の手続きをとるか、財産を長女以外の相続人に相続させる遺言を残す方法があります。しかし後者の場合は、長女から遺留分の取戻しを求められる可能性があります。

「相続人廃除の制度」

赤橙青3冊_91x100相続人になるのは、被相続人との間に一定の身分関係がある者です。この身分関係が婚姻や養子縁組によるものである場合には、離婚や離縁によって身分関係を消滅させ、その結果相続人の地位も失わせる事ができます。しかし実親子関係にあっては、現行民法では身分関係そのものを失わせる事はできません。現行民法では、親子の関係はそのままにして、相続権だけを剥奪する相続人廃除の制度があります。相続人廃除というのは、相続される立場にある人、すなわち被相続人が、家庭裁判所に申し立てて家庭裁判所の審判を得て、相続人を相続関係から除外する事です。相続人を廃除するには、子が親を虐待するとか、重大な侮辱を加えたとか、その他著しい非行がある事が必要です。また、相続人廃除は被相続人が遺言でする事もできます。この場合には、遺言執行者が家庭裁判所に相続人の廃除を申し立てて審判をうける事になります。遺言中に遺言執行者が指定されていない時には、相続人その他の利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをします。尚、いずれの場合も、廃除を求める事ができる相続人は、遺留分を有する相続人にかぎられます。遺留分を有していない相続人に対しては、後に述べる様に、その者になにも相続させない内容の遺言をのこす事によって目的を達する事ができるからです。

「相続人廃除事由の判断基準」

縦本入れ_79x100 相続人の廃除が認められる為には、被相続人に対する虐待または重大な侮辱、その他の著しい非行という廃除事由が存在する必要があります。これらの事由が存在するか否かの判断は家庭裁判所が審判により行います。
虐待というのは、被相続人の肉体や精神に苦痛を与える事をいい、重大な侮辱とは、被相続人の名誉や自尊心を著しく害する事をいいます。また、著しい非行とは、虐待や侮辱と同じ程度の非行でなければなりません。いずれも廃除は、相続人の相続権を完全に剥奪してしまう効力を有しますから、現在の社会常識から見て、かなりひどいと思われる程度の事由がなければなりません。その意味で、一時的な激情によるものではないか、被相続人がするべき事をしなかったり、むしろ挑発したりした事はないか、被相続人にも責任の一半があるのではないか、といった事情を慎重に判断すべきであるとされています。少年期の一時的な非行にすぎない場合や、親の意に沿わない結婚をしたにすぎないような場合には、廃除事由があるとは認められません。
ご質問の場合においても、長女の非行、暴力の程度がひどく、かつ継続的なものであって、しかも長女に改俊の情も認められない様な場合にかぎり廃除が認められるでしょう。

「遺言による方法」

赤見開き縦_110x100遺言によって財産を他の相続人に相続させる事にして、長女の取得分を0とする事もできます。しかし、この場合、長女は遺留分にもとづいて、被相続人の死亡後に他の相続人に対し遺留分減殺請求をして、遺留分にあたる分を取り戻す事ができます。そうなると、長女に相続させないという目的は達成できなくなります。この遺言による方法は、遺留分を有していない相続人、例えば兄弟姉妹といった相続人に対して相続させない様にする方法としては有効なものになります。

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Q_30遺産分割協議の話合いがつかないときは

 

相続人間で遺産分割協議を進めてきましたが、どうしても話合いがつきません。どのような手続きをとる事ができるでしょうか。

A_30 相続人間で遺産分割協議が成立しない場合、相続人の1人もしくは数人が申立人となり他の相続人全員を相手方として、家庭裁判所に調停を申し立てる事ができます。

「調停と審判の関係」

青紫緑3冊_100x100相続人間で遺産分割協議がととのわない時は、相続人は家庭裁判所に、遺産分割の調停もしくは審判を申し立てる事ができる事になっています。
調停は、家事調停委員2名と家事審判官(裁判官)により構成される調停委員会が、相続人から事情をきき、話合いで遺産分割についての合意を目ざす手続きです。審判は、家事審判官が適切な分割方法をきめる手続きです。
遺産分割にあっては、必ず先に調停を経なければならないという原則( これを調停前置主義といいます)をとっていませんから、立前上は最初から審判を申し立てる事もできます。しかし、家庭裁判所は審判事件として申し立てられた事件を、いつでも職権で調停を行う事ができる事になっていますから、実務上は審判を申し立てられてもまず調停に付するという扱いになっています。調停で話合いを続けても調停成立の見込みがない時、調停は不成立となり、事件は当然に審判手続きに移って審判手続きが進行します。

「調停申立手続き」

縦本入れ_79x100調停の申立ては、相続人の1人もしくは数人が申立人となり、申立人となる相続人以外の相続人全員を相手方として家庭裁判所へ申し立てます。申し立てる家庭裁判所は、相手方の内の1人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立ては書面または口頭で行う事ができます。口頭で行う場合は、家庭裁判所の書記官に必要な事項を陳述し、書記官が申立ての調書を作成する事になっていますが、家庭裁判所に備え付けてある申立書用紙に必要事項を記入して申し立てる事もできます。

「調停手続き」

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調停手続きは、通常家庭裁判所の調停室において、家事調停委員2名と家事審判官(裁判官)により構成される調停委員会により進められます。家事調停委員は民間人から任命されている者で、家事調停手続きの多くは、審判官は出席せずに調停委員2名により進められています。調停委員会は、申立人、相手方の両方から順次、遺産の範囲、遺産分割の方法、特別受益の有無といった点について主張をきき、双方に譲歩を求め、できる限り話合いによる合意を目ざします。
話合いの結果遺産分割について相続人全員の合意ができた時は、調停調書を作成してそこに遺産分割の方法を記述します。

「審判手続き」
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調停手続きを進めても相続人間の意見の対立が解消せず、遺産分割に関する合意の成立する見込みが立たない場>合は調停不成立となり、当然に審判手続きに移行します。
審判手続きは、家事審判官(裁判官)が職権により事実の調査をし、かつ申立てにより、または職権で、必要と認める証拠調べを行い、もっとも適切な遺産分割の方法を選択して審判を出します。職権によりといっても審判官が全ての事実や証拠を捜し出す事は実際上不可能ですから、相続人として積極的に事実を述べ証拠を提出する必要があります。
家事事件手続法では、相続人(当事者)は、適切かつ迅速な審理及び審判の実現の為、事実の調査及び証拠調べに協力する事が定められました。

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